初恋の記憶

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初恋の記憶

その年は例年より数週間早く桜の季節を迎えた。 二月の大雪が嘘の様に三月は汗ばむ様な陽気が続き、桜は蕾から一気に満開になり今日の卒業式に華を添えている。 その日は快晴で真っ青な空と、ピンクの桜の花のコントラストは最高の風景だった。 もちろん中学一年生の私にとって卒業式は直接関係ないイベントだけど、私の恋にとって今日は一つの大きなマイルストーンだ。 「お兄さん、呼んでくれたんでしょう?」 私は横に並んでる義信君に確認した。義信君は細くて背丈は私と同じくらいの男の子で、私のクラスメートだ。 「うん、父さん、母さんとの話が終わったらここに来るから・・ もうちょっと待って」 私の前で、遅いなーと言っている義信君の華奢な後ろ姿を見つめながら、同じ兄弟でこんなにも違うなんてと再び考えていた。 彼の兄の高岡先輩は昨年までサッカー部のエースとして母校の県大会優勝を牽引した。高岡先輩のシュートは彼のイニシャルからYT砲と呼ばれ他校を恐れさせていた。そして弟の義信君と違って一八〇センチを超える長身、モデル並みのルックス、成績も学年トップ・・ なので学校中の女子が憧れている飛び切りハイレベル、まさしく神に近い男子だ・・。 その神の様な存在に、今日、私はアタックするんだ。 「あっ、来た。兄貴!!」 義信君が手を振っている。体育館の方から高岡先輩が歩いて来る。満面の笑みを浮かべて・・ そう、私は・・あの笑顔に恋したんだ。
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