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帰りは船着場からSLに乗らず、駅までノンビリ歩いてみる。
プリーン駅から再び電車に乗り、今回の旅の最終目的地オーストラリアのザルツブルクに向かうんだ。
私は道の両側に並ぶいくつかの店を覗きながら、少しずつ駅に近付いていた。
その時だった。突然、右肩に掛けていたショルダーバッグが大きな力で引っ張られた。
そしてあっと言う間に肩紐が引きちぎられてバックを奪われてしまった。急いで振り返るとフードを被った男が私のバックを持って駅の方向に向かって走っている。
私は数秒間呆然としていた。だけど、あの中に財布もパスポートもスマホも入っている事を思い出し、パニックになった。
「誰か! その男を捕まえて!! 泥棒!!」そう言いながら私は男を追いかけた。
勿論、日本語で言っても誰も理解してくれないのに、混乱していてそれすらも忘れていた。
男の走る速度は尋常で無くて、私の足ではとても追い付けなさそうだった。その瞬間、私は石畳に足を取られ転んでしまう。
起き上がろうとした時だった。一人の男性が泥棒にタックルした。泥棒はバックを落とすと、何か叫んでいたが、そのまま逃げるように立ち去って行った。
その男性はバックを持って私の所に走って来てくれた。アジア系の長身、サングラスを掛けているので目の表情を伺い知れないが、物凄いイケメンだった。
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