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佐竹
この数日間、佐竹は羽衣子のアパートを監視していたが、彼女が一人で外出することはなかった。いや、実際は一人で外出していたが必ず若い男が尾行しているのだ。
またストーカーかと懸念したが、服装や顔付きなどから刑事だと判断した。
尾行だけでなく、アパートの見える位置で張り込んでもいる。
佐竹は慎重を期した。
過去の殺人には関連性がなく、多々ある遺留品があるにもかかわらず今まで佐竹にたどり着くことはなかった。指紋もない、戸籍もない。普通の人間が持っているものを持っていない。自分はこの世に存在しない人間なのだ。ゆえに容疑者として特定されることはない。
だが、羽衣子への贈り物は違う。ケーキ屋の二人はもとより、他の二人も警察の捜査力をもってすれば関連があることにすぐ気付く。
だからといってそれで佐竹にたどり着くことはまずない。捜査上に浮かぶのは羽衣子のみだ。
贈り物を捧げることに嬉々としてその危険を失念していた。
刑事が張り付いているということは羽衣子が疑われているのだ。
だとしたら警察も随分間抜けだ。羽衣子のような女にあれだけのことができるわけがない。
佐竹は嘲笑ったが、何も知らない彼女が気の毒だった。
早く自分のものにしてしまわなければ。
それには刑事の隙を突いて羽衣子を奪わねばならない。
佐竹は羽衣子が一人になる瞬間をゆっくりと待った。
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