第1章 緑の夏

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そして、その恐怖の人形を追いかけ回している少女はもっと恐ろしく見える。 あと二十秒。 少女は正確すぎる体内時計で秒数を数え、一秒の誤差もなく屋上へと犬のぬいぐるみを誘導しながら走り続ける。 時折その鎖を廊下の壁にぶつけ、ぬいぐるみの軌道を操りながら目的地へと向かう。 五、四、三…… 屋上に辿り着き、少女はぬいぐるみを追いかけるのを止め、立ち止まる。 二、一…… 今だ。 「ダーリン!行きました!」 「おしっ!あとは任せろ!」 屋上にある貯蓄タンクの裏に隠れていた雅樹は合図と共に弾けるように飛び出し、その手に握った真っ黒の大鎌を振りかぶり、横薙ぎに振るう。 「っうぉりゃぁぁ!!」 「ギャギャッ……」 雅樹の大鎌が犬のぬいぐるみ……パペットの首を刈り落とし、パペットは光の粒子となって消えていく。
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