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「じゃあ結局マネージャーが出来ればなんでもよかった、というワケですか?」
口の周りのかゆみをティッシュでふき取りながら、そう返した。
「そうなの! ほら、私って尽くすタイプじゃない?」
そうなのか、全くもって初耳だった。とろろは尽くすタイプ、というのを心のメモ帳に記しておく。
「そういうもんなんですか」
「そういうもんなのよ」と答える彼女の横顔は、どこか遠いところを見つめている気がしたが、とろろなのでどこを見ているかわからない。目はどこにあるのだろうか。もしかして私の肩ぐらいの高さにある黒いものか。でもそれは山芋の皮の部分に相当するものが、すりつぶされ損ねたものなのではないだろうか。そもそも山芋に皮はあるのか?
「いやだわ、もう」そう言って頬? を赤らめた彼女に俺は愛おしさを感じた。「こんなおばさんじろじろと見ちゃって」
なるほど。やはり長芋のすり残しではなく、そこが顔に相当する場所でよかったらしい。
☆
ごちそうさまです、といいつつ無理に代わって貰った洗い物を壊す。「そうね、水でとけちゃうから苦手だし、それくらいはお願いしちゃおうかしらん」と言った彼女は、居間のソファ(当然人工皮革張りだ)に座ってテレビを見ている。
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