擦るぜとろろを

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擦るぜとろろを

「とろろさん! 大丈夫ですか!」  そう言って、ぐったりと? していて、いつもより艶っぽい(含水量的に)彼女に声をかける。 「う、うん。ちょっと濡れすぎちゃったみたい」  声に張りがない。やはりぐったりとしていたのだろう。 「とにかく、早く部屋に入りましょう」  鍵はありますか、と声を掛けると体の中をまさぐって粘っこい鍵を彼女が取り出した。以前聞いたことがある、「女性は胸の谷間に何かを仕込む」に近いものなのだろうと、自分を納得させる。  ☆  梅雨時期。今日は雨が降らないだろうと今朝アナウンサーが言っていたのにも関わらず、夜半過ぎにはしとしとと。  田和さんとばっちり決め込んで部長を兄弟になった後、いくばくかのむなしさを覚えて「えー、もう帰っちゃうの-」という彼女に「ごめん、洗濯物干しっぱなしで」というあながち嘘でもないが、さりとて情事の後うら若き女性を置いて帰る理由にはならない程度の言葉を置いて、足早にオフィスを去った。  オフィスを出た頃にはまだ雨はぱらぱらぱら、という程度であったが、家に帰る頃には鞄を雨傘代わりにしなければ少し嫌だな、という程度のまとまった雨になっていた。     
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