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横から顔を出したのは、これもとろろさん。口調から考えて、おそらくとろろ婦人の方だ。彼らはとろろなので、一見見分けはつかない。
「まあまあ、朝からいいじゃないか。挨拶出来る若い人って最近少ないんだし」
「そりゃあそうだけど、でももうちょっと元気出してもいいんじゃない? だって、春なんだし」
夫婦の口論、というより喧嘩するほど仲が良いという印象を与える犬も食わないそれを見て、すみませんすみません、とこれもへらへら笑って退散する。
別に嫌な感じはしない。ちょっとべたべたする――粘っこい――彼らの人間性(とろろ性?)が嫌いではない。むしろ、居心地がよいとさえ曽場は感じていた。
自分の中に足りないピースを埋めてくれる、そんなように思えていた。
☆
こんな荒み切った現代日本、まさか転勤先でこんな隣人がいるとは思ってもみなかった。都会の風は厳しいぞ、人を見たら泥棒と思え、などと故郷の親父殿や友人は言っていたが、全くそんなことはなかった。
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