とろろがいる

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 そう答えると、「あらよかった!」とばかりにとろろさんが笑顔を振りまいた。多分笑顔だったと思う。自信はない。  ☆  荷解きの間、少し喋った。  曰く、地方で仕事が出来ないから東京に飛ばされたこと。こっちでは知り合いが誰もいないこと。貯金も無いので、少なくとも給料日まではロクな食べ物にありつけないこと――。  えも言われぬ包容力で、包み隠さず悩みを話してしまった。これもとろろさんの、何にでも、誰にでも合うような粘り、もといやさしさなのだろうか。やさしさに包まれたような感覚、地上に降りた最後の天使。  それこそがとろろさんだった。  ☆  結局、上京して初日の夜は、とろろさんにご馳走になってしまった。アレルギーではないが、流石にあそこまで長芋をすりつぶしたものを食べると、口の周りが痒くなって仕方がないが贅沢は言わない。
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