だってとろろ

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だってとろろ

「この無能! ウジ虫! ブタゴリラ! 死んで詫びろ!」  極めて有能な上司の一喝をBGMに、優雅な昼のひと時は始まる。  事の起こりは……説明する気にもならない。ただ一つ言えるのは、営業の私が勝手に値引きしたのが死ぬほど問題になっているということだ。利益率なんて知らんもーん。  俺が気にもせず平気な顔をして弁当を広げている(もちろんとろろだ)横で、たっぷり5分間、ハートマン軍曹よろしくな演説をぶちかまして最後に一言、「生命保険だけはしっかりかけておけよ」とにらみを利かせてきた上司の言ったセリフは何一つ頭に入っていない。入るのは口からとろろだけ。  ☆ 「それにしても……部長言い過ぎじゃない?」  同僚の田和さんが声を掛けてくれる。この部署で唯一気を許せる友人だ。 「大丈夫大丈夫。なんたって、この部署は皆無能だから。もちろん、部長も含めてね」 「まあ、そうなんだけど。改めて言われると、そんなにいい気もしないわね」 「肝心なのはプライドを捨てることだよ。ウンウン」     
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