夏の校舎の大人たち

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*** 「白川は朝はスマホを見た気がすると言っていた。そのあと、友達といくつか出し物を見てまわって、気づいたらなかったらしい。あいつがまわった店全て確認するぞ」 「はい」 千波のクラスの白川という男子生徒は、このあと1時間はクラスでお化け役。さらにその後1時間は後夜祭の準備でスマホを探す暇がないらしい。 今日は外部のお客さんも来ているから、拾われて持ち帰られたら大事だ。 それで、千波が代わりに校舎中を探すことになったのだった。美玖はその付き添い。 「まず最初はここだな。1年3組の射的屋」 「入り口入って右のほうの台で遊んだようです」 美玖が白川から受け取ったメモを読み上げる。 「せっかくだから、やっていくか射的」 「え?遊んでていいんですか」 「実際に白川の行動をたどらないとわからないだろ。ほら、何がほしい」 「えー、そう言われても……」 「おい、原。ここで一番人気ないやつどれだ」 「うわー千波きてくれたんだ!誰も取ってくれなくて困ってるのは、あれ!」 原という女子生徒が指さしたのは、ピンクと黄緑の蛍光色のカエルのぬいぐるみ。そこそこ大きい。顔がなんとも可愛くない。 「よし、俺がとってやる。そして最上先生に押しつける」 「いや、いらないです!」 「遠慮しなくていいぞ。いつも副担頑張ってくれてるお礼だ」 そう言いながら、千波は狙いを定めて撃った。 パン、と小気味よい音が響いてカエルが倒れる。 「えっ、すごい。倒れた……」 「きゃー!千波かっこいい!またファンが増えるよ!」 「まあ、当然だな。ほら」 手渡されたカエルは近くで見るとよりグロテスクだった。 どうしよう。 文化祭、ちょっと、楽しい、かも。
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