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「白川は朝はスマホを見た気がすると言っていた。そのあと、友達といくつか出し物を見てまわって、気づいたらなかったらしい。あいつがまわった店全て確認するぞ」
「はい」
千波のクラスの白川という男子生徒は、このあと1時間はクラスでお化け役。さらにその後1時間は後夜祭の準備でスマホを探す暇がないらしい。
今日は外部のお客さんも来ているから、拾われて持ち帰られたら大事だ。
それで、千波が代わりに校舎中を探すことになったのだった。美玖はその付き添い。
「まず最初はここだな。1年3組の射的屋」
「入り口入って右のほうの台で遊んだようです」
美玖が白川から受け取ったメモを読み上げる。
「せっかくだから、やっていくか射的」
「え?遊んでていいんですか」
「実際に白川の行動をたどらないとわからないだろ。ほら、何がほしい」
「えー、そう言われても……」
「おい、原。ここで一番人気ないやつどれだ」
「うわー千波きてくれたんだ!誰も取ってくれなくて困ってるのは、あれ!」
原という女子生徒が指さしたのは、ピンクと黄緑の蛍光色のカエルのぬいぐるみ。そこそこ大きい。顔がなんとも可愛くない。
「よし、俺がとってやる。そして最上先生に押しつける」
「いや、いらないです!」
「遠慮しなくていいぞ。いつも副担頑張ってくれてるお礼だ」
そう言いながら、千波は狙いを定めて撃った。
パン、と小気味よい音が響いてカエルが倒れる。
「えっ、すごい。倒れた……」
「きゃー!千波かっこいい!またファンが増えるよ!」
「まあ、当然だな。ほら」
手渡されたカエルは近くで見るとよりグロテスクだった。
どうしよう。
文化祭、ちょっと、楽しい、かも。
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