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淑女の礼をとり顔を上げると、美しく澄んだ吸い込まれそうな青い瞳と視線が絡む。
彼はにっこりと微笑みを浮かべると、そんなかしこまらなくてもいんだよ、と優しく微笑んだ。
「君は僕を覚えているかな?僕と君は、一度出会っているんだ」
思ってもいなかったその言葉に、疑問符が頭の中に浮かぶ。
出会っている……、私が……王子様と……?
えーと、第一王子とお会いしたことはあっただろうか……。
必死に記憶の中を探してみるも、どこにも見当たらない。
うーん、さすがに王子様と会ったことがあれば、忘れるはずがないと思うんだけれど……。
黙ったままに、しばらく考え込んでいると、王子が私を覗き込むように視線を向けた。
「覚えていないのも無理はない、だって君は5歳 僕は7歳だったから……。でもね、あの時出会ってから僕は ずっと君のことだけを見ていたんだ。一度だって忘れたことはない」
突然の告白に開いた口がふさがらない。
5歳……?
まだグレイと出会う前……。
仮に出会っていたとして、どうしてそこまで……?
もしかして……5歳の私は彼に失礼な何かをしてしまったのだろうか。
うんうんと頭を悩ませる中、王子は見惚れるような笑みを浮かべながらに、口を開いた。
「ねぇ、突然だけど、僕の婚約者になってくれないかな?」
婚約者?
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