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その男の子の姿に、私は隣に乗車していたお父様の腕を、そっと引っ張った。
「お父様、馬車を止めていただけないかしら」
私は上目遣いでパパを見つめながらに、お願いをしてみる。
「なんて可愛いのだ。しょうがないなぁ、パパが何でも叶えてやろう……!今すぐ馬車を停めよ!!!」
パパの言葉に馬車は道の端により、ゆっくり減速していく。
私は馬車が止まったのを確認するや否や、勢いよく馬車の扉を開き、勝手に外へと飛び出した。
お父様や従者が慌てた様子で私を捕まえようとするが……私はそれらの手を全てすり振り切っていく。
しばらく走っていると、人込みの中、さっき見えた透き通るブロンドの髪を見つけた。
その少年は道端にしゃがみ込み、両足を前で抱え、今にも泣き出しそうだ。
「ねぇ、君大丈夫?こんなところで何しているの?」
そう声をかけてみると、目に涙をためながら見上げた彼はビクッと驚いた様子を見せる。
そんな彼に私は徐にしゃがみ込むと、とびきりの笑顔を向けた。
「泣かないで!探しものなら一緒に探してあげるから!」
すると彼は無言のままに、ただただ私を見つめていた。
何だろう……穴があきそうなほど見られている……。
その視線に戸惑う中、動く気配のない彼の様子に私は彼の手をとり(一緒に行こう)っと誘ってみる。
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