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彼は無表情のまま頷き、ゆっくりと立ち上がると、私は彼の手を強く握りしめながらに、街の中へと進んでいった。
人込みを掻き分けていく中、私は男の子へ顔を向けると、クルクルの瞳を覗き込む。
「ねぇ?何を探しているの?大きいもの?小さいもの?どこに落としたのかわかる?」
彼は少し考えた表情を見せると、立ち止まって私の手を引っ張った。
そんな彼の様子を不思議に眺めていると、なぜか今にも泣きだしそうな表情を見せる。
私はそんな彼に頬を上げ優しく微笑んで見せると、小さな震える手をギュッと握りしめた。
「そんな悲しそうな顔しないで、笑うとみんなが楽しくなるんだよ!あなたの笑った顔を見てみたいな」
彼は私の言葉に驚いた表情を見せると、今にも溢れそうだった涙がひっこんでいく。
そうして……少年は小動物のような可愛らしい笑顔を見せてくれた。
「かわいい!やっぱりあなたの笑った顔はとても素敵ね!!!」
私はかわいさのあまりに、彼の頭を引き寄せ強く抱きしめる。
彼は抱き寄せている私の手を握ったかと思うと、小さく口をひらいた。
「もう見つかったんだ」
見つかった……?
何が……、何を……?
彼の頭に回した手はそのままに、よくわからないことを言う彼を覗き込んでみると、澄んだブルーの瞳と視線が真っすぐに絡んだ。
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