逃げた先に

1/3
70人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ

逃げた先に

そうして私はバラの庭園を、急ぎ足でかけぬけていく。 ドレスが脚にまとわりつき、こけそうになるが……私は何とかバランスを取ると、会場まで走り続けた。 そしてようやく会場の明かりが見えると、私は後ろを振り返り王子が来ていないことを確認する。 後方には美しい庭園が広がるだけで、誰の姿もない。 私は胸をなでおろすと、急いで息を整え、騒がしい会場内へと戻っていった。 会場へ続く扉を開けると、貴族女性に囲まれていたグレイと目があった。 彼は女性を押しのけながら、私の元へと歩いてくる。 「どこへ行っていたんだ!」 グレイは怒った様子で私の腕を強く掴かむ。 心配そうに揺れる彼の目をみつめ返し、ごめんね、と笑顔で答えると、私は彼の手を取りゆっくりと会場へと戻った。 会場は先ほどとは違い、艶やかなな音楽と、人の声にあふれかえっていた。 そんな中、グレイスを囲んでいた女性たちの視線が痛い……。 グレイはかっこいいもんね……。 そんな彼が社交界デビューの小娘に取られたら、そうりゃこうなる……。 恐る恐るに女性貴族たちの顔色を伺う中、握られていた手に力が入った。 「それでどこに行っていたんだ?変な男に絡まれたのか?」     
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!