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逃げた先に
そうして私はバラの庭園を、急ぎ足でかけぬけていく。
ドレスが脚にまとわりつき、こけそうになるが……私は何とかバランスを取ると、会場まで走り続けた。
そしてようやく会場の明かりが見えると、私は後ろを振り返り王子が来ていないことを確認する。
後方には美しい庭園が広がるだけで、誰の姿もない。
私は胸をなでおろすと、急いで息を整え、騒がしい会場内へと戻っていった。
会場へ続く扉を開けると、貴族女性に囲まれていたグレイと目があった。
彼は女性を押しのけながら、私の元へと歩いてくる。
「どこへ行っていたんだ!」
グレイは怒った様子で私の腕を強く掴かむ。
心配そうに揺れる彼の目をみつめ返し、ごめんね、と笑顔で答えると、私は彼の手を取りゆっくりと会場へと戻った。
会場は先ほどとは違い、艶やかなな音楽と、人の声にあふれかえっていた。
そんな中、グレイスを囲んでいた女性たちの視線が痛い……。
グレイはかっこいいもんね……。
そんな彼が社交界デビューの小娘に取られたら、そうりゃこうなる……。
恐る恐るに女性貴族たちの顔色を伺う中、握られていた手に力が入った。
「それでどこに行っていたんだ?変な男に絡まれたのか?」
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