7人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女は微動だにせず、赤信号が青になるのを待っているのであった。その信号機に直進してくるトラックの存在なんか意に介さないといった様子で、そこを動こうとしない。
恭介は考えるより先に動いた。
「そこの人ー! 危ないからー!」
考えるよりも先に口が動いた。当然と言えば当然だが、場違いではあった。
しかしそれでも彼女は動かない。よく見れば耳にはイヤフォンが刺さっている。
「タイミング悪っ!」
思わず口から出てしまう。
しかしそんなことを言っていてもトラックが止まることはない、そう思考を切り替えた恭介は猛ダッシュ。
元来運動神経が良い方ではない恭介だが、自転車を買うのももったいないからと少し遠いが走って(遅刻しそうな時)大学まで行っていることと、長期休みになれば必ずやっていた引越しバイトのおかげかスタミナだけは有り余っている。
トラックはなおもスピードを上げて走っている。最初はふらふらと走行していたようだが今は信号機に狙いを定めているかのように直進している。
普段の恭介ならば、見て見ぬふりをしたかもしれない。自分には関係のないことと言ってしまうかもしれない。はたまた買いためていたモヤシが腐る前に食べてしまおうと言って早々に帰ったかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!