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 生きているはずがない、そう思ったのだ。どう考えてもあの状況で助かるなんてことはできないのに、と。むしろ生きていることに対して焦りを感じた。そこで恭介の思考はある方向へ飛ぶ。    もしかすると、神の力を無意識的に使ってしまったのではないか、とそう考えたのだ。もしそうなのだとしたら、恭介は格上の神から重い罰を与えられることになる。死ぬことより、生き地獄よりも苦痛なものが与えられるのだ。    それだけは避けなければならなかった。恭介に残った粒子レベルの神のプライドが許さなかった。 「大丈夫ですか?」    恭介があーだこーだ考えていると、頭上から声がかかった。聞き覚えのある声だ。先程雷に打たれたと錯覚したほどなのだから、間違いはない。    額に汗を滲ませながら顔を上げると、そこには恭介が助けた相手がいたのだ。手をついて倒れている恭介を膝を折り曲げてのぞき込んでいた。 「ぇ……は、あれぇ」    その時脳内を支配していたのは、重い罰を与えられることなどではなく、綺麗な顔が近くにあることに動揺する気持ちだった。二回目の人生から異性に近寄られたことがない恭介、異性との会話の仕方など既に忘れていたのである。    しかし頭の回転はいい恭介、手っ取り早い問題提起をすることによってその場をしのぐことにした。 「えっと、俺、ど、どうして、助かって……」 「あぁ、危なかったので私が」       
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