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「…………馬鹿だ……俺……」
俺の記憶の覚醒は、サクラの想いを知らせるための布石だったんだ。なのに……[サクラにも俺にも、まだ時間はある]なんて、なんて子どもで、身勝手で、愚かなことを考えてしまったんだろう。長い年月を彷徨い続けていたサクラには、待つ時間は地獄でしかなかったのに。
『お願い……殺して…………』
「できない……できないよ……」
―誰かを好きになるって、幸せだけじゃないよね。苦しくて苦しくて胸が潰されそうな時、自分はこんなにもこの人のことが好きなんだって思えるよね……
『殺して……』
「嫌だっ」
生きる為に必要なら、この血を捧げる。
―貴女が生きるために必要なら、この身を捧げよう
……ああ……。それは昔、俺が彼女に言った言葉だ。
「………できない………」
それは――サクラを狂気に走らせるだけだ……。
『私……この時を……待っていたの……。お願い……殺して……』
「…だから……嫌なんだ……。俺は……サクラとずっと……一緒に……」
一生涯、傍にいて守り続ける。
満月が天空にある夜空の下、満開の桜の大木を見上げるサクラと老人の姿。
「生きて……いきたい…………」
共に生きたい。でも、俺にはできない。
それは――サクラを孤独に陥らせるだけだ……。
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