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―私がまた助けてあげるよ
『一哉くん……お願い……。私……生まれ変わって……また一哉くんに…会いたいの。……今度は……人として…普通の女として…貴方に会いたい……。だから……お願い……私を……殺して…………』
―一哉くん。来ない方がいい。辛くなるだけだ
―あの桜の精霊と会うのはやめた方がいい。哀しい想いをすることになるよ
―兄貴、これ以上会うのはやめた方がいい。哀しい想いをすることになるぞ
―誰かを好きになるって、幸せだけじゃないよね。苦しくて苦しくて胸が潰されそうな時、自分はこんなにもこの人のことが好きなんだって思えるよね……
―来世で私は能力者になると約束する。そうして、あんたを鬼にさせているこの呪縛から解き放ってやろう
俺は、サクラの肩に片手を回したまま、右手に力を集中させた。俺を見上げる彼女がその瞬間微笑み、頭上の枯れ枝に向けて、腕を伸ばした。枯れていた桜の樹が震え、白に近い淡いピンク色の花が一気に開花する。同時に俺は、自身が作り出した光の剣で、魂が輝くサクラの身体の中心を突き刺した。
サクラが弾け、衝撃波に変わる。それは一迅の風となり、満開の花を散らせた。花びらが、花房が、消えたサクラの後を追いかけるように宙に舞う。
「サクラ…………」
『ありがとう……』
聞こえる声に、俺はゆっくり、ゆっくり、首を横に振る。
違う……それは俺がもらっていい言葉じゃない……。
俺の心が広かったなら、もう少し自分が大人だったなら、もっと早くに救うことができたかもしれないのに。お互いによく話し合い、納得した上でなら、穏やかな状態でサクラを昇天させることができたかもしれないのに。
「一人きりの時間を与えて、キミを苦しませてしまった俺に……感謝の言葉を送らないでくれ……」
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