それから十数年後の春

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 それは、新しく赴任した先の高校での出来事だった。  四月初めの日曜日。異動の荷物が入った段ボール箱を片付けていた俺は、休日出勤をしていた数人の教師のうちの一人に声をかけられた。 「今から校庭の桜の下でお花見やるんですけど、柚村先生も一緒にどうですか?」  お花見と聞いて、彼らが休日出勤をしていた理由がわかった。苦笑する。 「なんだ。花見目的で来ていた訳ですか」 「ははは。まあ、そんなところです」  時計を見やれば、正午を少し過ぎた頃合いだった。 「弁当買ってきてないんですけど、それでもいいですか?」 「ええ。さっきコンビニへ買い出しに行ってきたんで。あ、でも、参加費は徴収させていただきますよ」 「了解です」  畳んだいくつかの段ボールを脇に抱え、花見へ向かう教師たちの後を追う。  サクラをこの手で葬ってから、17年が経った。あれから色々な経験を積み、俺は自分の力をあまり使わない人生を選んだ。そして、ようやく春の日差しの中に咲く桜を眺めることができるようになり、こうして花見への参加を快諾できるようにもなった。  校舎から校庭へ出る。風に乗って、どこからか音楽が聞こえてきた。 「ごめんなさい、って先に言っておきます~」  先頭に立つ若い教師が二人、急にくるりと振り返って頭を下げた。 「今日、この花見のことを生徒に聞かれちゃいまして」 「『先生たちがいるなら練習してもいいでしょ?』って、部活の休日練習の許可を無理やり取らされてしまいました」 「おいおい。生徒たちがいたら、飲酒なんてできないじゃないか~」 「……すみません……。なので、これ全部ノンアルです……」 「マジか。うう……、花見酒、けっこう楽しみにしてたのに……(涙)」  落胆する教師を横目に、口を挟む。 「休日練習するなんて、活動熱心な子たちですね。何部なんですか?」 「ダンス部です」
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