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サクラと出会ったのは、山奥にある田舎町の、地区の神社の宮司をしている柚村の養父母に引き取られた日のことだった。
家の背後にある大きな鳥居。その向こうにある小高い丘とそこに見えるピンクの色が気になり、弟の二葉と共に行ってみた。
そして、見えた光景に息を呑んだ。
ピンク色の正体は、巨木の桜。小学生の目で見てもそれは綺麗で、さらに俺の目を奪ったのは、天女のような装束を翻して舞い踊る女性の姿だった。
枝下の石舞台の上、降り注ぐ陽光の下、くるくると回転する。垣間見える表情には、踊ることが楽しいというのが傍目にもわかる笑顔が浮かんでいて……。
綺麗だと思った。そして、さらに俺の心を奪ったのは、鮮やかで華麗な宙返り。
うわ……すごい…………。
だが、感動は長くは続かなかった。養父に抱えあげられ、俺は我に返った。
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