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その人から連絡が来たのは、2週間後だった。連絡のこない数日不安を覚えたが、3日目くらいからはもう私も連絡を忘れていた。 2週間後送られてきた内容はといえば、喫茶店のホームページのリンクが貼られていて「ここに行こう」とだけ。さらっと日程調整をして、直近の土曜の朝に決まった。現地集合だ。 入学して以来こういうカフェには一人で来ていたから、緊張しているような気もする。何を喋ったら良いんだろうという不安もあった。裏腹、実際にはその人は話を繋げるのがとても上手だったし、その上私たちには明確な目的があったのだから、私達は一瞬も持て余すことがなかった。
連れられていったお店は「喫茶 パステル」といった。パステルカラーの内装かと思っていたが調度は木が目立ち、意外にシックな雰囲気だ。壁には店主が描いたのだろうか、優しげな風景画が5、6つ掛かっている。駅の近くの大通りに面していて、この時間帯は大きなガラス窓から太陽が眩しい。初めて二人で出かけるのには安心できるお店で、少しだけその人を見直した。
2人で丸いテーブルを挟んで、メニューを開く。紅茶が8種類、その他の飲み物も同じくらいの数置いてあった。開店早々訪れた私達は食べ物を頼むほどでもなく、紅茶の注文だけになりそうだった。その人が紅茶に詳しいのはもう知っていたから、恐る恐る切り出す。「紅茶のこと、よく知らなくて。どれがいいのかな」
8種類のなかで知っているものを訊かれたので、ダージリンとアッサムは聞いたことがある、と答えた。どっちでもいいか、と尋ねられるがままに頷く。その人が手を上げてダージリンを2つと言っている間、私はその横顔を眺めていた。
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