第0話 君が知りたい

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 その人に会ったのは、三度目だった。  一度目は近所のカフェで。二度目は大学で。三度目が今、この喫茶店で。  初めてカフェで会ったとき、どこかで見たなと思った。だから本当は初めてではなかったのだろう。大学で会ったとき、成る程同級生だったのかと思った。佐川(さがわ)(みなと)という名前を友達に聞いた。そして今、その人を目の前にして、何かが始まる気がしている。  話しかけてきたのはその人のほうだ。同じ大学だよね、と訊かれて、そうだと思う、と言った。カフェが好きなの、とも訊かれた。紅茶が好きなの、と答えた。 その日は紅茶の話と、少しだけ自分たちの話をした。私は正直茶葉の種類なんかはよく分からない。家でも適当な温度でティーバッグのものを淹れている。時々ポットを出す。紅茶のお菓子や美味しそうなフレーバーティーを見つけるとうきうきする。  その人はもう少し詳しいようで、にこにこしながら話をし聞いていた。その人からの提案があったのは、連絡先を交換してさあ帰ろうかというときだった。
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