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第1話 ダージリン
入学1年目は教養科目ばかりだった。同じ学部の人にも、授業が違えばあまり会うことはない。2年生になるといわゆる専門科目が始まって、クラスメイトにもよく会う。その人も、違うクラスではあったけれど時々見かけるようになった。実質的にはこの前が初対面だったようなものだ。
佐川くんってどんな人、と友人達に訊いてみた。口々にイメージが飛び出す。
「線が細いわけじゃないけど、雰囲気は優しいよね」
「あんま喋ったことない」
「授業にちゃんと出てる」
「合唱部だったかな、たしか」
皆もよく知らないようだ。でも良い印象はあるのだろう、思いの外盛り上がってしまった。
「悪い人ではない気がするよね」
「それで、佐川くんがどうしたの」
連絡先を交換したとも言い出せず、出先で見かけたんだ、とだけ言った。
大学での私たちは別段親密にすることもなく、かといってわざと避けるでもなく、会えば挨拶をするくらいの仲になった。その人からのメッセージは一向に増えない。私の生活においては、知り合いが1人増えただけという感じだった。
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