第2話 アッサム

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「おはよー」 字面どおりの発音をする。おはようでもおはよでもなく、おはよー。私とその人との関係はそのくらいのものだった。補足するとしたら、道ですれ違ったとき以外に学年全体が集まる授業でも挨拶を交わすようになった。 「佐川くんじゃん。ミミに何か用」 とは、私と立ち話をしていた友達の言。別に冷やかすわけでも責め立てるわけでもない、純粋な疑問文だ。私もその人も、からかわれるタイプではないのかもしれない。 「ミミって呼ばれてたっけ、小泉さん」 「小泉(こいずみ)(みお)で、真ん中取ってミミ。昔からね」 「へえ。かわいい」 そういえば男の子には小泉さんとしか呼ばれていなかったかもしれない。昔からの友達にはミミちゃんとかミミとか呼ばれている。愛着のあるあだ名だがウサギにつける名前のような印象なので、本当は澪と呼んでほしい時もある。 ・・・そんな本音は言えないまま、結局学校での私達はそれ以上の話をしなかった。
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