第2話 海辺の町

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第2話 海辺の町

 この世界が終わろうとしていたとき、少女の世界は終わりのない日常が続いていた。  サンジュとリジ―がいる世界とは違う、別の世界。そこは日本とよばれる国で、砂漠ではなく、海の見える町だった。  つまりはきみたちの世界だ。  キノシタミオ。サワザキアヤ。ふたりも十七才の少女だった。  彼女たちは学校にいた。昼休みだった。美術室の横の階段で、弁当を食べていた。高校に入学して以来、そこはずっとふたりの場所だった。海からの風が階段から吹き抜けて、彼女たちの黒髪をゆらした。  ハッピー、ハッピー、ハッピーバースデイ。  ふとそんなフレーズがうかんでミオは口ずさんだ。 「だれの誕生日なの?」 「さあ、しらないけど、きっとだれかの誕生日よ」  ふたりはすこしだけ笑った。  笑ってすぐにその歌は意識からはずれた。
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