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序
この物語はすでにエンドロールが流れている。世界は終わろうとしていて、もうエピローグしかない。きみが、この世界の豊潤な物語を欲しているなら、これから先はページをめくらなくてもいい。これはきみの知らないどこか別の世界が消えていくだけの話だから。
終わりを告げられたのは、ドラゴンが住まう世界だ。ドラゴンはこの世界に恵みをもたらした。果てしない年月がいくつもの物語を生み出した。悲劇があり喜劇があった。笑いがあり涙があった。勝利があり、敗北があった。だがその物語を語ることを今はよそうとおもう。それは私の役目ではなく、きっとほかの誰かが語り継ぐことだろうから。
世界の終わりは、静かに、ひっそりとはじまった。
大陸の東の果て。小さな花が水晶のような透明で硬い結晶になった。世界が完全に終わってしまう十八年前のことだった。
それが世界の終わりのはじまりだとわかっていたのは、王宮にいる一部の星読みたちと、西の民だけだった。
大陸の西の果てに、はじまりの王家の末裔たちが住んでいた。
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