夜ざくら観覧車

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夜ざくら観覧車

「十年後の今日、もしお互い恋人がいなかったり結婚してなかったりしたら、もう一度、この場所で会いたいんだ」  あの日、あの約束をしたまま、二人は観覧車の下でそれぞれの道を歩みはじめた。  まだ肌寒さが残る4月。名所になっている夜桜のアーチを抜け、約束の場所に向かってひとり歩く。  なぜ私はあの日、「好き」ってひとことが言えなかったんだろう。どうして彼の気持ちを確かめようとしなかったんだろう。彼には他に好きな人がいたから? それが自分の親友だったから? ──違う。  傷つくのが怖かっただけ。
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