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 しかし期待に満ちた徹の目は、まるで大型犬が餌を心待ちにしているような純粋さを秘めていて、御門にはどうしても突っぱねることができなかった。 「別に、いいがーー」  そう答えながらも御門は内心後悔している自分に嫌気がさす。嫌ならば断ればいいものを、何をやっているんだ俺は。と、もやもやと考える。だが目の前の男はすでにパアッと表情を明るくして、満面の笑みになっていた。さすがに期待させておいてやっぱりダメだなどと言える雰囲気でもなく、御門はとうとう諦めて徹に向かって口を開く。 「場所変えるぞ」 「え? ここじゃダメなんですか?」  徹がきょとんとすると、御門はぎゅっと眉間に皺を寄せて恐ろしく低い声を出した。 「ここで脱げるわけないだろう」 「っ、あ、はい……」  さすがの徹も息を飲んで肩を縮めたが、やはりよくわかっていないのかしきりに首を傾げる。そんな徹を放って御門は店の方へと歩き出した。その後をついていこうとした徹に気づくと、パッと振り返り「ステイっ」と、大柄な部下に命令する。思わず足を止めた徹に、 「荷物取ってくるから待ってろ。お前の、席に置いてあるだけか?」  と有無を言わせない口調で御門は訊ねた。 「あっ、はい。黒のショルダーのやつですっ」  反射的に答えた徹の言葉を全て聞き終わる前に、御門は颯爽と歩いて路地からいなくなる。     
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