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 険しい声に聞き覚えはなかったが、情けなくすがる声の主は知っていた。向かおうとしていた商品管理部主任の遠野である。会おうとしていた人物がそこにいることに戸惑った徹は、ますますそこから動けなくなってしまった。 「俺の気持ちをわかってくれてもいいだろう?」  遠野が少し拗ねたように言うと、相手の盛大な溜め息が聞こえてくる。 「なんで俺がお前の気持ちを汲まなきゃならん。もうこの話は終わりだ。じゃあな」  中から足音が聞こえてきて、慌てて隠れようと左右を見た徹だったが、通路のど真ん中にそんな都合の良い場所があるわけもなく、給湯室から足高に出てきた人物と結局鉢合わせしてしまった。 「あ……」  書類を両手で胸の前で持った徹を見て、聡い男はすぐに察したらしく、ギロリと上目遣いで睨みつける。普段であればそれだけで縮みあがり謝罪を繰り返すところだったが、徹はその時まったく別の事を考えていた。 「きれい……」 「ーーふんっ」  その人物は類い稀な容姿の持ち主で、まるで芸能人がドラマ撮影でもしてるのかと勘違いするほどに煌めいて見えた。だから思わず徹の口から正直な感想が漏れたのだが、綺麗な顔をしたその人物は徹の言葉を鼻で笑い、颯爽とその場を去る。  その背中をぼうっと見送る徹の頭を、後ろから叩いた者がいた。 「いたっ……。あっ、遠野主任、お疲れ様ですっ」     
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