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 赤面して顔を俯けもじもじとする徹に、御門が眉間の皺を寄せた。 「今さら何を動揺してるんだ。ほら、さっさと上がれ。見たら満足するんだろう?」  無意識なのかわざわざ客用のスリッパを置いてくれた御門に、徹はそれだけでときめいてしまう。しかし廊下の先のドアを開け奥へ消えた背中に、徹は慌ててドアを閉めると靴を脱ぎスリッパを履いた。  御門の消えたドアから中を覗き込むと、そこには広めのリビングが広がっていた。  持ち主のセンスがそこかしこに見られ、モノトーンで統一された中にも生活感があり落ち着ける雰囲気である。おずおずとそこに足を踏み入れた徹はそこに御門の姿がない事に気づき、辺りを見回した。 「ソファに座って待ってろ」  その様子を見ていたかのようにリビングから続く隣の部屋のドアの向こうから御門の張り上げた声が聞こえ、徹は戸惑いながらも言われた通りにする。  黒色のソファーは合皮なのか汚れの一つもなく、表面が鈍く照明を反射していた。そこに自分が座ることで皺でもつけやしないかと浅めに腰かけた徹は、御門が出てくるまでバッグを抱え込んでそこから身動き一つせずに待つ。     
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