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「えっと……御門課長……ここはーー」
バッグを両腕で抱えた徹は、御門の後ろでおろおろとした。
高級感のあるマンションをエレベーターで八階まで上がり、迷いなく通路を歩く御門のあとを徹はずっとついて歩いてきたのだ。その間御門は一言も話さず、後ろを振り返りもしない。なので徹は黙ってついてくるしかなかった。
「俺の家」
鍵を開けながらようやく口を開いた御門が、後ろの徹を仰ぎ見る。突然イケメンに振り返られた徹は、その美しさに「うっ」と思わず仰け反った。
「何やってんだ。上がれよ」
呆れた口調でそう言い残しさっさと中へ入ろうとする御門に、徹は慌てて閉まろうとしたドアを押さえる。
「えっと、あのっ、なんでっーー?」
ドアを背中で支えたまま、玄関先で靴を脱いでいる御門にそう徹が訊ねると、思い切り剣呑な視線が寄越された。
「お前が言ったんだろうがっ。見たいって!」
「え? あの、タトゥー、ですよね? 足首の……」
「そうだ。お前が全部見せろって脅したんだろうが」
ふんと鼻を鳴らし腕を組んだ御門に、ようやく徹は自分が言ったことの意味を悟る。
「あっ、えー、えっと……」
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