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 営業のオフィスの中はガランとしていた。当然である。社員のほとんどが営業に出ているのだから。そんなオフィスの中、机の島から少し離れた場所にあるデスクに座って書類に目を通しているのは御門だった。  御門はこう見えても叩き上げの社員である。  何でもスマートにこなす冷静沈着な姿を見てすぐにそうとわかる者はいない。ただ他よりも昇進するのが速かったのは確かだ。御門と同期で課長にまでなっているのは本社では他に一人しかいない。他の同期は係長止まりか退職した者がほとんどである。中には出向してそのまま戻ってこない変わり者もいた。  営業一課は会社の花形でもあり、その部署を率いる御門は相当な切れ者だと周囲は噂する。もちろんそれに容姿の良さが付随するのも、この会社のみならず関連会社ででも当然の事と受け止められていた。見合いの話が舞い込んでくるのも一度や二度では済まず、実際に相手に強引に会わされた経験もある御門は、社長に次ぐ社内きっての有名人である。     
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