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 昼休み時間。  エルムは机の下でこっそりとファッション雑誌のページをめくっている。  僕が住んでいる世界とは違う、華やかな色彩のパレードに見えた。僕が雑誌をのぞき見していることに、彼女はすぐに気がついて顔をあげた。 「あたしのエルムって名前、変だよね。日本人なのにさ、カタカナで、しかもカエルみたいだし」  彼女はページを閉じようともせずに、ぽつんと言った。  僕も<エルム>なんて不思議な名前にどんな意味があるのか、いつか訊こうと思っていた。 「どんな名前にも意味があるはずだよ」 「ハルニレの木、知ってる?」  ハルニレの木? 僕は知らないと、答えた。  ふんわりと生い茂る、素敵な木なんだって。  僕は見たこともない樹木を想像してみた。青い空に向かって梢をのばしていく大きな木。<エルム>はハルニレのように、って意味なんだね。  まあね、そういうこと。  彼女は大人びた言い方をした。 「あたしの夢はね、横浜とか神戸みたいな港の近くで、ファッション関係のお店を持つことなんだ。だってカッコいいし、ロマンチックじゃん」 「へえ、凄いな! じゃあ、店の名前は<エルム>で決まりだね」 「ありがと、飯沢君!」嬉しそうに笑うとファッション誌を広げた。「ね、ほらこれ、かわいいでしょ?」  同意を求められても、女の子の服装になんかまったくわからないのに、ぺらぺらとページをめくっていく。港街が一望できる風景写真の見開きページでその手が止まった。 「こんな場所でお店持ちたいんだ」  異国の風景の中に出てくるような店と颯爽と働くエルムの姿を想像して、僕にはいい夢があるのだろうかと訝った。 へえ、凄いなあ。 二人で盛り上がっていると、女子たちが何々どうしたのと集まってきた。
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