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 あのね、うちの親が飯沢君の家に行ってはいけないって。飯沢君のお母さんから電話があってね・・・ばっかみたい。チクりおばさんの話を真に受けちゃってさ。あたし、お母さんに抗議したけど、先方さんの都合だからダメだって。でもお別れの記念にプレゼント用意したから。 エルムは照れくさそうに、空色のリボンを結んだ筒状の白い紙を差し出した。  水色の雨が降り、家並みや路地の黄色鮮やかな山吹の花が背景に描かれた色鉛筆画だった。絵の真ん中の主題は、ふたりならんだあいあい傘。  これはね、わからんちんの親への猛抗議の意味が込められているんだよ。  エルムは笑いながら言ったが、目が濡れたように光っている。  僕は必死に言葉を探した。見つかる前に、彼女はばいばいと手を振って、改札口から離れていった。  なんだあ、帰っちゃうのかあ。  これは、まわりにいたクラスメートたちの囃したてる声。  エルムの寂しそうな後姿を、僕はいつまでも見送っていた。  おい、飯沢。みんな揃ったぜ。早く行こうよ!  仲間が急き立てた。  翌日、僕は色鉛筆セットの交換を提案した。  えー、交換するの? あたし、これお気に入りだからだめー。エルムは昨日とは変わって、いつもの陽気さをふりまいた。でもさー、この空色ならいいよ。半分ほどに縮まったスカイブルーを差し出した。カッターで彫ったらしい<エルム>のロゴが読めた。    
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