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「じゃあ、そこまで」
僕は特別な感情も持たずに、彼女の横に並んだ。
「今の時期はさあ、傘は必需品だよお」
エルムは勝ち誇ったように<必需品>などとませた言葉を使った。
「でもさあ、朝は天気良かったンだぞ」
僕は傘の下から明るくなりかけた空を見上げた。
「そうだね! 天気いいと、傘なんていらないよね!」彼女は大きな声で笑い、急にひそひそ声になった。「でもさあ、あいあい傘みたいで、カッコ悪いね。アタシたちうわさになるかな」
その瞬間、僕の胸がどきんと跳ねた。
「じゃあまた明日、バイバイ」
その時生まれた淡い感情を隠したくて、僕は急いで傘から離れた。
事件はその日の夜中に起きた。
僕は寝ていたのだが、突然、叩き起こされたのだ。
「和彦! お前、何をやったのだ!」
父親と母親が物凄い形相で、僕をにらみつけていた。寝ぼけていたこともあるが、なぜ両親がなぜ怒っているのか全く理解できなかった。
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