【春~半分桜~】

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…とっ! 「うわぁ!!」 裏庭に着いた途端! 私と束砂は、ほぼ同時に感嘆の声をあげてしまった! 裏庭の真ん中に生えている大木に、実に見事な桜が満開に咲き誇っていたのだ! 「お、お婆ちゃん! こ、これは、見事な桜だな!」 私は、興奮してお婆ちゃんに言った! 「だろ?!私もびっくりしちまったよ! でも、この木に花が咲いた事なんて、これまで一度も無かったんだけどねぇ!」 と、お婆ちゃんはニコニコしている。 「うん!確かにそうだよな!私も高校の時にこの木に花が咲いたのを見た事無いよ!」 私は、引き続き興奮しながら大声をあげた。 「…うーむ、この白っぽい花びらは…ソメイヨシノだな!」 束砂も、すっかり興奮して腕組みしながら大木の裏手に回っている。 と! 「わっ! おい!大地!ちょっと、こっち来てみろよ!」 彼が、更に大声をあげた! 「え?ど、どうした?!」 と、私も束砂のその言葉に大木の裏手に回ってみて… 「うわぁ!!」 再び!思わず大声を張りあげてしまった! な、何と! 大木の『裏側』に咲いている桜は… 全て! 花びらが 『黒かった』のである!! 「な、何だっ?!こりゃっ!」 その『黒い花』は… 『毒々しさ』という物がミジンも感じられず、むしろ上品な美しさを漂わせている。 「な?珍しいだろ?」 と、お婆ちゃんは相変わらず私達の驚きをよそにニコニコと笑っている。 『珍しい』どころの…騒ぎではない!! …白い花と、黒い花…。 二種類の違う色の花が、 同じ一本の木に半分ずつ咲くなんて!! まさに… 『半分桜』とでも、言うべきか…。 って言うか、桜…なのか? 「さあさあ! 二人とも!そんな事より、お花見をしようじゃないか!」 お婆ちゃんが嬉しそうに言った。 そう言われて… 見てみると、木の横の芝生の上に『ござ』が敷いてあって、そこにジュースやビール、お菓子が既に山ほど用意されていた。 「わぁ!お婆ちゃん!これは凄いな!」 「やぁ!お婆ちゃん!ありがとう!!」 「どうぞどうぞ! じゃんじゃん食べて飲んどくれよ!」 私達は、ござに座るとワイワイと話に花を咲かせた。
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