【春~半分桜~】

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と… ふと、私は裏庭の隅っこに有る花壇に目を止めた。 「…あれ??」 「うん?どうかしたかい?」 お婆ちゃんが私に声をかけてきた。 「いや、あの花壇… 今は、何も植わってなくて柵しか無いけど…。 確か、いつもチューリップとかヒマワリとか咲いてたよな?枯れちゃったのかい?」 「い、いやぁ…じ、実は、そうなんだよ。 それで先月、新しくチューリップの球根を植えたんだけど、まだ芽も出やしない…。 まあ、まだ寒い日も有るからねぇ」 「そうなんだ…」 それから… 私達は、そんな風にいろいろとお喋りをして… 気付いたら夕方になり、 お花見は『おひらき』となった。 「いやぁ、今日は楽しかったよ!ありがとうね!また、おいでね!」 と、手を振るお婆ちゃんに手を振り返して、私と束砂は駅までの帰路に着いた。 そして、道を二人で歩いて… お婆ちゃんの姿が見えなくなった所で、 私は、急に立ち止まった。 「うん?どうした?大地」 「なあ、束砂よ。 お婆ちゃん…何か、私達に『隠し事』をしてるんじゃないだろうか」 「…へ?」 彼の目が点になった。 「隠してるって…何をだ?」 「うん。 あの…強風で小石が飛んで来てガラスが割れたっていう、ブルーシートの窓だけどさ…。 最近の天気予報、全てチェックしているが、そんな強風は北海道のどこにも吹いてないんだよな…」 「…え?」 「それと、さっき見た裏庭の花壇…。 チューリップの球根を植えたけど寒くてまだ芽が出ないって、お婆ちゃんは言ってたけど… お前も見ただろ? 今日の昼に見た駅前商店街の花壇。 あそこには、めちゃめちゃ綺麗なチューリップが既に咲いてたじゃないか」 「…えっ? って、事は…お婆ちゃん、自分達に『嘘』をついたって事か?でも…何でまた?」 「うーん、分からん」 と… その時。 私の頭の中に… ある… 『仮説』が生まれた。 「なあ、束砂。 これは、あくまで私の『仮説』なんだけどな…」 と、私は彼に説明をした。 それを聞いた束砂は、驚きの声をあげた。 「な、何だって?! そ、それが本当なら大変な事だぞ!」
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