【春~半分桜~】

13/16
前へ
/42ページ
次へ
{4} さて。 その日の深夜…。 既に辺りは暗く、 墨田商店の明かりも消え、ひっそりと静まり返っていた。 そして… その暗闇に乗じるかの様に… 二人の作業員が… 墨田商店の裏庭に、 こっそりと忍び込んで来た。 一人は、懐中電灯と『ひしゃく』を持ち、 もう一人は、持ち手が付いた大きめのプラスチック缶を持っていた。 二人は… そぉっと忍び足で、 裏庭の真ん中に有る『半分桜』の前までやって来た。 「これが… あいつらが言っていた『白黒・半分桜』か…。 なるほど。白い花と黒い花が同じ木に咲いてる…」 と、一人が花を懐中電灯で照らしながら言う。 「凄いな…。何か、枯らすのは、もったいないような気も…」 もう一人が呟く。 「バカ。これも仕事だ。さっさと取り掛かろうぜ。 この…強力な除草剤を今夜のうちに撒いておけば… 連休明けには、この木も枯れて…」 と… 一人が、プラスチック缶の蓋を開けようとした… その時である!! 「おい!そこで何してるんだ!!」 いきなり! 二人は、背後から声をかけられ飛び上がった!! 見ると! お巡りさんが一人、仁王立ちしているではないか! 「やべえっ!!」 二人は!大慌てで、その場から逃げ出そうとした! が! あっさりと、お巡りさんに捕まってしまった! そして… 茂みに隠れていた… 私と束砂は、 ゆっくりと外に出た。 「ハハ、まんまと引っ掛かりやがったな!」 私は、男達に声をかけた。 「そりゃあ、焦るよなぁ! お婆ちゃんの土地で咲いた、この『半分桜』が、もし『天然記念物』に認定されでもしたら… お前ら、この土地に手出しできなくなっちゃうもんなぁ」 「へへーん!ちなみに自分、松竹教授の連絡先なんて知らないよーん!」 と、束砂もニヤニヤしながら言った。 「お、お前ら!俺達をハメたのか?!」 と、男の一人が叫ぶと… がっくりと肩を落とした。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加