【夏~後日談~】

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「いやぁ、大地! 今日も、暑いなぁ!」 束砂が、額の汗を拭いながら声をあげた。 「あぁ、そうだなぁ」 私、大地も彼に同調して声をあげる。 いやぁ、いくら北国・北海道とは言え… この時期は、やはり暑い。 ふと、空を見上げると… 目の前に雲一つ無い、抜けるような気持ちの良い青空が広がっていた。 遠くでセミの声が聞こえて来る。 「でも、束砂! 今日は、本当に気持ちの良い青空だな!」 「いやぁ、本当だなぁ!」 と、束砂もまぶしそうに空を眺めた。 今は、八月の中旬。 ちょうど、お盆の時期だ。 もちろん、私と束砂は二人とも夏休み真っ只中である。 ここは… 札幌から、遠く離れた田舎町の駅前広場…。 そうなんだ! この町は、私…大地と束砂が高校三年間、毎日通った… あの『墨田商店』が有る、 様々な思い出に溢れた町! 今日、私と束砂は高校卒業してから、これで三度め… この町を訪れたのだ。 実は今、ここで… 私と束砂は、墨田のお婆ちゃんと待ち合わせをしている。 そして… 三人で、あの白黒猫… シロとクロのお墓参りに行く予定だ。 先日、私達はお婆ちゃんから手紙をもらった。 その内容は… いろいろと私と束砂を驚かせる事だらけだった。 まず、あの『白黒・半分桜』があの後、『事件解決』とほぼ同時に散ってしまい、 今は深緑の葉が生い茂る、元の大木になった事。 そして… 私も束砂もゴールデンウイーク中に墨田商店にお花見に行った時には、気付かなかったんだが… 何と! 実は、あの大木の根元近くには… シロとクロの小さなお墓が有ったんだそうだ! そして、それが先月… この町の郊外に有る、立派なペット霊園に埋葬し直されたんだそうである。 何でも、それに必要なお金は、町のお巡りさんの呼びかけによって、実にたくさんの募金が、本当にまたたく間に町中から集まったんだとか。 その事を聞き付けた、いつも墨田商店に寄り道している高校生達からも、たくさん募金が集まったそうである。 「いやぁ、墨田のお婆ちゃん…やっぱり、町中の皆からも学生さん達からも慕われてるんだなぁ。うん!分かる気がするなぁ!」 と、私は駅前広場の青空を見上げながら… そんな思いにふけった。
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