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卒業式
「三年前の春、私たちはこの体育館で入学式を迎えました。」
その日、いつも走り回っている体育館には
卒業生代表の真野かすみの声だけが響いていた。
「初めての教室、初めての授業、初めての出会い。その全てに対して期待と不安を抱きながら、私たちの高校生活は始まりました。」
静かに流れていく真野かすみの声を聴きながら
僕は出会った頃の彼女を思い出していた。
当時の彼女はきっと、期待なんかよりも不安の方が大きかった。
入学当初、僕と同じクラスであった彼女は
いつも怯えたように下を向いて、自信なさそうにしていた。
賢くて、優しくて、強い女の子なのに
彼女はいつだって「目立つのが嫌い」と言っては地味な生活を送り
クラスで目立っていたのは成績だけだった。
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