卒業式

1/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

卒業式

「三年前の春、私たちはこの体育館で入学式を迎えました。」 その日、いつも走り回っている体育館には 卒業生代表の真野かすみの声だけが響いていた。 「初めての教室、初めての授業、初めての出会い。その全てに対して期待と不安を抱きながら、私たちの高校生活は始まりました。」 静かに流れていく真野かすみの声を聴きながら 僕は出会った頃の彼女を思い出していた。 当時の彼女はきっと、期待なんかよりも不安の方が大きかった。 入学当初、僕と同じクラスであった彼女は いつも怯えたように下を向いて、自信なさそうにしていた。 賢くて、優しくて、強い女の子なのに 彼女はいつだって「目立つのが嫌い」と言っては地味な生活を送り クラスで目立っていたのは成績だけだった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!