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誰かが、自分の名を呼んだような気がする。
騒がしい店内で、内海 翔吾(うつみ しょうご)はそう思い顔を上げた。
「内海!」
果たしてその名を呼ぶのは、河瀬(かわせ)だった。
赤い顔をしてグラス片手に、翔吾の弟・内海 凌也(うつみ りょうや)の袖を引っ張って声を張り上げている。
「お前からも言ってやれ!」
こちらも酔って、いささか耳が遠いのだ。
翔吾は、4人挟んだ向こう席の河瀬に怒鳴っていた。
「何を!?」
「もうちょっと遊べ、って!」
途端に、河瀬と凌也を囲む席が笑いの渦に巻き込まれる。
状況がよく解からぬまま翔吾も愛想笑いをし、伸ばした体を落ち着かせた。
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