2人が本棚に入れています
本棚に追加
一人目の幽霊
「…くん、おはよ。」
次の日の朝、昨日言われたことを考えながら登校していると、渡辺さんに声をかけられた。
「昨日はひどい雨だったね。いつになっても止まないから、どうなるかと思ったよ。でも、…くんが傘を貸してもらったおかげで、風邪をひかなくて済んだよ。ありがとう。」
僕はあの後、降りしきる雨の中、傘を持たずに歩いた。ただ、不思議と濡れはしなかった。雨が大好きな霊もいるのだろうか。
通学路を歩いていると突然、籠ったような女性の声が聞こえた。
「…さん、私の未練、聞いてもらいますか?」
未練?
声が聞こえたほうを見てみると、そこには、白いワンピースを着た少女がいた。
しかし、その少女には足がない。浮いているのだ。
「ちょっと、渡辺さん。忘れものしたから、家に戻ります。」
僕はそう言って、路地裏に入り込んだ。
「あなたは、僕に取り憑いていますか?」
「ええ、そうよ。それより、アタシの未練っていうのは、気に入った男がどんな恋をしているのかをみたいの。」
「その気に言った男って…」
「アンタよ、…さん。」
「僕、恋なんてしていないですよ。」
「え、十四なのに、まだ恋してないの?」
僕は誰かに恋してはいけないと思う。僕みたいな不運な人と付き合うと、その人まで不運になってしまう。
「ちょっと、アンタ。なに人のことをヅルヅルと考え込んでいるんだよ。そんなんじゃ、アタシの未練なんか叶いっこないじゃん。」
「頭の中を見通してます?」
「幽霊だもの。そんくらいできるわよ。」
「人のプライバシーですよ。」
「死んでいるんだから、法律なんて関係ないわ。それよりも、今はあの子のことを大事にしなさい。いつしか恋になるわよ。」
「いや、そんなわけ…」
「じゃあ、あの子と仲良くするのよ。じゃあ、また会いましょう。」
そして、その少女は消えていった。
「何だったんだろう…」
最初のコメントを投稿しよう!