一人目の幽霊

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一人目の幽霊

「…くん、おはよ。」 次の日の朝、昨日言われたことを考えながら登校していると、渡辺さんに声をかけられた。 「昨日はひどい雨だったね。いつになっても止まないから、どうなるかと思ったよ。でも、…くんが傘を貸してもらったおかげで、風邪をひかなくて済んだよ。ありがとう。」  僕はあの後、降りしきる雨の中、傘を持たずに歩いた。ただ、不思議と濡れはしなかった。雨が大好きな霊もいるのだろうか。  通学路を歩いていると突然、籠ったような女性の声が聞こえた。 「…さん、私の未練、聞いてもらいますか?」  未練? 声が聞こえたほうを見てみると、そこには、白いワンピースを着た少女がいた。  しかし、その少女には足がない。浮いているのだ。 「ちょっと、渡辺さん。忘れものしたから、家に戻ります。」  僕はそう言って、路地裏に入り込んだ。 「あなたは、僕に取り憑いていますか?」 「ええ、そうよ。それより、アタシの未練っていうのは、気に入った男がどんな恋をしているのかをみたいの。」 「その気に言った男って…」 「アンタよ、…さん。」 「僕、恋なんてしていないですよ。」 「え、十四なのに、まだ恋してないの?」  僕は誰かに恋してはいけないと思う。僕みたいな不運な人と付き合うと、その人まで不運になってしまう。 「ちょっと、アンタ。なに人のことをヅルヅルと考え込んでいるんだよ。そんなんじゃ、アタシの未練なんか叶いっこないじゃん。」 「頭の中を見通してます?」 「幽霊だもの。そんくらいできるわよ。」 「人のプライバシーですよ。」 「死んでいるんだから、法律なんて関係ないわ。それよりも、今はあの子のことを大事にしなさい。いつしか恋になるわよ。」 「いや、そんなわけ…」 「じゃあ、あの子と仲良くするのよ。じゃあ、また会いましょう。」  そして、その少女は消えていった。 「何だったんだろう…」
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