メッセージ

1/2
前へ
/12ページ
次へ

メッセージ

言われるまま、総合病院の精神科で診療を受ける。医師から色々問診を受けた。総合的な結論から言うと、僕は妻に関することだけを認識できない特殊な精神疾患といわれた。このような症例は他にないらしい。何故妻だけを認識できないのか。写真にしてもそうだ。どうやら妻と一緒に写っているらしい写真も、僕だけを撮っているようにしか見えない。妻の書いた直筆も、紙に書いたらそれは白紙でしかない。メールならどうか。電子的なものは読めるらしい。妻の名前はとうこ。僕はどうやらそのとうこさんと結婚して三年、現在も同居しているみたいだ。とうこさんは僕の異常に気付き、色々手を尽くしてくれていることがメールの内容で分かった。僕は当初、このメールを目にした時、薄気味悪く思って早々にブロックし、読んでいない。ブロックを解除し件数を見ると、三百件以上受信されていた。 「正ちゃん、昨日はごめんなさい。あんなに怒鳴って。でも、何を話しかけても無視するし、ぶったってまるで何もなかったみたいだし、正直怖かった。疲れてたんだよね?ごめんなさい。」 とうこ 「正ちゃん、やっぱり変。今日も何も言ってくれない。私がまるでいないみたい。意地悪してるの?何か私に非があるなら直すから。本当にどうしたの?」とうこ 中略 「正ちゃん、もう一週間経っちゃった。何となくだけど、私のこと嫌いになったわけではないことが分かった気がする。正ちゃん、私のこと、認識出来ないんだね。色々調べたんだけど、人の顔が認識できない症状とかあったし、多分そんな感じだと思う。でも私、頑張るよ!正ちゃんのこと、愛してるんだもん。」とうこ 中略 「今日は正ちゃんの誕生日ですね!ハッピーバースデー!ケーキ食べてくれて嬉しかったよ。」とうこ 中略 「明けましておめでとう!今年こそ、正ちゃんの病気治らないかな。」とうこ 中略 「正ちゃん、苦しい。頭が痛い!インフルエンザかも。移したら大変なんで、ちょっと実家に帰ってます。」とうこ 「正ちゃん、ただいま!帰ったよ。やっぱりインフルだった。ごめんね。でも、移ってなかったみたいだね。良かった。」とうこ そういうメールに何も回答しないのに、とうこさんは黙って僕についてくれていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加