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会話
僕は医師に尋ねた。治るのかと。医師は首を縦に振らず、横に振った。こういう症状は治った例がないし、「まず貴方の症状自体が異例中の異例なんです。」と医師は言う。ちょっと間を置き「奥さんの年齢は?」と聞かれ、僕は人事に提出した書類の年齢を思い浮かべ、29歳と答えた。「率直に言うと別れた方がいいですよ。奥さん、このままだと辛いだけだ。29ってまだやり直しできる年齢ですよ。」医師が言うことはもっともだと思う。治る見込みのない僕といるより、別れて他の人生を歩み出した方が、とうこさんにとって幸せなのではないかと。僕は医師に「そうですね。」と言い、病院を後にした。
家に戻ると発症して以来、初めてとうこさんにメールを送った。
「とうこさん、いる?ちょっとお話ししたいんだけど。」正志
ピロリン
「正ちゃん!?どうしたの。私が認識できるようになったの!」とうこ
ピロリン
「ごめん、違うんだ。今日、精神科に行って、結論を言うと、僕はどうやらとうこさんだけが認識できない疾患だと言われた。それも、極めて特殊なんだと。」正志
ピロリン
「分かってた、一緒に暮らしてから一年と三ヶ月・・正ちゃんに症状が出てからずっと耐えてきたもん。治ることは?私、今、貴方の隣にいるんだよ!」とうこ
そのメール後、僕の体が激しく揺れた。恐らくとうこさんが僕を掴んで揺らしているんだろう。でも僕にはただ地震がきて揺れているとしか感じない。誰かが体に触れている感覚が全くないから。揺れが落ち着いてから、僕は静かにメールを送った。
ピロリン
「ごめん、とうこさん。治る見込みは保障できない。これから本題なんだけど、よく聞いて欲しい。君のためを思うと、僕達は、別れた方がいいと思います。」正志
それに対し、返信はなかった。その日も、次の日も。その間、食事の用意とか、炊事関係の動きもなかったが、三日目を過ぎた頃、また今まで通り、炊事関係がなされていた。毎日、毎日、献身的にとうこさんは、僕のため働いている。僕は負い目、引け目を感じ、また、とうこさんに宛てメールした。
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