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「じゃあ、次は戸村の番だな」
これ以前の流れの記憶はない。
気づいたら、学級委員である飯田が折り紙で作った箱をこちらに向けていた。
箱の中には、小さく折られた紙が数枚入っている。
僕は適当にその中から一枚の紙を取り出した。
「よし、じゃあ成田だな」
どうやら席の流れに沿って、学級委員が各地に赴き、くじを引かせているらしい。
僕は彼女の方を見ることが出来なかったので、こっそりと折り畳まれた紙をめくり、中に書かれた番号を見た。
28番。
僕は黒板に目をやった。
その番号が示す席は最後列の右から2番目。
まぁでも、そんな事もうどうでもいいか。
「じゃあ、皆さん開封してください」
学級委員の声に合わせて各地から歓声と悲鳴が入り交じった効果音が教室中に鳴り響く。
「ねぇ楓。何番だった?」
成田さんは前の席に座る矢島さんに質問されていた。
楓とは、成田さんの下の名前である。
「ん?1番かな」
「えー!一番前じゃん!楓可哀想!!」
「うん。ホント私運悪いね」
僕は成田さんの番号を聞いて何故か少しホッとした。
下手にまた隣同士の席だったら、余計に気まずくなるだけだ。
むしろこれで良かったんだ。
もう僕と成田さんはクラスメイトだけの関係だ。
そうだ。この席になる以前の関係に戻るだけではないか。
けど、どうしてだろう。
こんなに涙が溢れそうなのは。
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