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戦いはこれからも続く
「お前はすごく長考するタイプなんだなぁ」って、将棋を教えてくれたおじいちゃんによく言われていた。
そうなのだ。私は一手一手じっくり考える。どうするのが最良の手なのか。焦ってつまらないミスをしないように。最後に必ず最高の結果を手に入れるために。
それが私の持ち味だし、強みなんだ。
そう。
だから恋も同じ。
どうしたら私のことをよく知ってもらえるのか。女の子として意識してもらえるのか。好きになってもらえるのか。
じっくり考えて、作戦を練りに練って、頭の中でシミュレーションして。
それを幾度も吟味して。
実行に移すのは、一つひとつの計画が完全に練り上がった後じゃなきゃ。
「ええっと、うん。そうだね。あんたは昔からそういう子だね」
小学校以来の友人である景子は、ぬるくなったコーヒーを飲み干しながら、どこか苦々しげに頷いた。
飲み時を逃したコーヒーがまずかったせいだろう。
「そうそう。景子はやっぱりわかってくれるよね」
私は嬉しい。久しぶりに景子に会って、私の話に理解を示してもらえて。
だって、他の人に話したところでみんな「理解できない」って顔をするんだもの。
「大長考してさ、練りに練った一手を指したときに、おじいちゃんいつも褒めてくれたわ。さすが、よく考えただけあるな。最高の手だなって」
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