帰り道

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「私……悠里に嫌われたと思って心配したんだから」 「え……」 「話しかけても無視するし、バツ掃除与えられて怒ってるんじゃないかと思って……」  見るとお嬢様の瞳にはうっすらと涙が溜まっていた。しかしお嬢様は真っ直ぐに、真っ直ぐに僕のことを見つめ続け、視線を外そうとしない。  あぁそうか。  そこでようやく理解した。お嬢様の涙を見て、如何に自分の考えが浅はかだったか思い知る。お嬢様を大切にしなくてはと考えるあまり、お嬢様の心と向き合っていなかった自分を恥じた。 「本当に……よかった」  柔らかく微笑んだ目尻からは溜まった涙が雫となって一滴溢れた。  こんなにも真剣に、使用人である僕と向き合ってくれるお嬢様のためにできること。今に僕にできることは一つだった。制服のポケットに手をいれると、水色のハンカチを取り出した。日頃だったら失礼な行為と言って絶対にやらないが、躊躇することなくお嬢様の頬を伝う涙を拭った。
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