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そんなこと
「あぁ、ユリ・・・無事で良かった・・・。」
絞り出すように彼が口にした言葉は、この病院へ来るまでの間、どんな心配していたかを物語っていた。
この手で、彼に触れたい。
その髪に、指を絡めたい。
けれど今は、全身が鉛のように重くて頭を動かすことさえ難しい。
極度の緊張状態が続いたためか、出血が多かったからなのか、それとも薬の作用なのか、私にはわからなかった。
彼の言葉に返事も出来ず、小さく微笑む。大好きな、大きくて骨ばった手が、ゆっくりと私の髪を撫でてくれる。
そして私はそのまま目を閉じて、繋がれた手に安心しながら眠りに入った。
どのくらい眠っていたのか、ふと目が覚めるとやはり彼はそこにいた。
ベッドの横の椅子に座って、ペンで手帳に何かを書いている。
目を開けた私に気付くと、ニコッと笑う彼。
「洋一さん・・・。」
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